ラジオ クラウドナイン
【書き起こし】

松重 豊×木野 花

1週目:2017.11.28 O.A.
2週目:2017.12. 5 O.A.

松重豊さんがDJを務めるFMヨコハマ『深夜の音楽食堂』に、木野花が2週連続でお邪魔した回のオンエア書き起こし。
ラジオを聴けなかった方へ、これから「クラウドナイン」をご覧になろうと思われてる方へ。
松重さん、番組ご関係者さまにご許可をいただき、オンエアすべて掲載させていただきます。

1週目 2017.11.28 O.A.より

潮風がかすかに香るこの町、横浜。港を背にレンガの道を2~3分歩き、路地を曲がればこの店があります。扉には「音楽食堂」の文字。ここは火曜の深夜にだけオープンするお店。
あ、「音楽食堂」オープンの時間です。どうぞ、ごゆっくりお過ごしください。
  ~タイトルコール~
 
   
松重 FMヨコハマ『深夜の音楽食堂』へようこそ、マスターの松重豊です。最近、わたくしはですね、映画「探偵はBARにいる3」今週12月1日からの公開ということで、大泉洋ちゃん、松田龍平くん、北川景子ちゃん、リリー・フランキーさん、前田敦子さん、ほか出演ですね、もう5・6年前からやってるんですけども、毎回ね、サウナに入るシーンがありましてですね。サウナに入るシーンってことは結局裸をみせなきゃいけないんでね、ま、大泉くんと二人で裸を晒すんですけどもね、あのー、役者やっぱり裸のシーンがあるっていうとね、やっぱりちょっと、キスシーンがあるとかっていうよりもちょっとね、それよりちょっと、あーめんどくさいなと思うんですよ、やっぱり体を鍛えなきゃいけないんで。まあ「探偵はBARにいる1」やったときに大泉洋くんがですね「僕もカラダを鍛えるためにホテルに…」あれはなんていうんだろう、なんか体鍛えるための動かない自転車あるじゃない、ん?エアロバイクか、エアロバイクを買って体鍛えてるっていうのをたまたま「僕も買ったんだよ」って話しをして、僕もね家にあのー買ってね「いやー高かったもう10万以上したんだけど」って言ったら、大泉くんはどうもね、19,800円の安物を買ったみたいでね。主役がそれじゃちょっとダメなんじゃないかなと言ってたんですけどもね。まーでも今回はね、もう5・6年経ってるんでね、もう、なんだろ、大泉くんも中年俳優になってたんでね、体鍛えるよりも美味しいもん食べようじゃないかってことでね。札幌に行くとねーまたなんかね美味しいもん連れて行くんですよ、あの男が。なんか話したよねこれ、油そば、油そばがねーウマくてね、油そば食べてまいりました。
えーさて、深夜の音楽食堂、今夜は女優で演出家の木野花さんがご来店です。この後すぐのご登場、今夜も最後までおつきあいください

松重 えー、松重豊がお送りしているFMヨコハマ『深夜の音楽食堂』今夜のお客様はこの方です!
木野 どうも、木野花です
松重 あっははははははは(笑)よろしくお願いします
木野 よろしくお願いします、松重さんっ!
松重 いや、さんづけは気持ちが悪いんでね、今も言ってたんですけどマツシゲ、松重とね
木野 そうなんですよ、呼び捨てでね
松重 呼び捨てにしていただきたいですよね、ぜひ
木野 じゃ、そういうことで、言われたんならしょうがないから
松重 もうかれこれ、ほんとにもう27・8年前からの
木野 そうですね
松重 おつきあいで、もう30年以上のおつきあい
木野 30年近いですね、早いですね
松重 早いもんですね。何にも変わってないですけどわたくしもほんとに
木野 ほんと変わってない、白髪になっただけで
松重 色気が出てきたかどうかって話もね、ちょっとね、あとで聞きたいところなんですけどもね。私は木野さんにね当時、いろんな課題を出されましたんで
木野 はい
松重 それがクリアできないとあなた35歳までに消えるよって言われてね
木野 あははははは、ちょっと待って
松重 ぐふふふふふふ
木野 (笑いながら)なんでここで、アタシ、暴露大会これ?
松重 いや、暴露大会じゃないですよ、昔話の一連でね
木野 はい
松重 えーここで木野花さんのプロフィールということでですね、青森県のご出身、弘前大学教育学部美術学科を卒業後、中学の美術教師となるものの1年で退職、上京して演劇の世界に入ります。1974年に東京演劇アンサンブル養成所時代の仲間5人と女性だけの劇団「青い鳥」を結成、翌年に旗揚げ公演を行い80年代の小劇場ブームの旗手的な存在となります。1986年に劇団を退団、以後、女優として舞台・テレビ・映画などにご活躍、そして演出家として活躍を続けてらっしゃいます。近年の作品、映画「ハローグッバイ」菊池健雄監督、「恋人たち」橋口亮輔監督、「男の一生」廣木隆一監督、テレビドラマ「あまちゃん」、「女囚セブン」テレビ朝日などなど、そして近年の舞台の主な演出作品には月影番外地その5「どどめ雪」作:福原充則、「八百屋のお告げ」作:鈴木聡さんなどがあります。そして12月1日から始まる「クラウドナイン」の演出も手掛けてらっしゃいます。お忙しい中どうもご来店ありがとうございますー
木野 よろしくお願いします
松重 いやお久しぶりでございますけれども
木野 いやほんとにね
松重 えーと、小劇場ブームの旗手的な存在で、だから、僕と木野さんがお会いしたのは、ちょうどほんとに小劇場ブームが、まあ少しこうー
木野 終わりかけてたかもしれない
松重 要するに劇団という体制から少しずつ、プロデュースで。木野さんプロデュースでフラワーズカンパニーというのをやられているころに僕も誘われて出たりしたんですよね
木野 はい
松重 あの頃、だから、東京の俳優部は、木野さんのところに行けばちょっと変われるよみたいな、なんか風潮があったんですよね
木野 ねえ
松重 木野さん、もともと教師じゃないですか
木野 そう、だから、勘違いしてるんじゃないかと思うんだよね。だって(演劇の)先生じゃないからさ
松重 うん
木野 なんか教われると思ってんだよね
松重 だってー
木野 全然そんな気もないし
松重 うん
木野 そういう技も持ってないから
松重 理路整然と教えるっていうことよりも「あんたさー、なんでそんなさー」
木野 (笑)ちょっと待って
松重 「色気ないのとかさ」
木野 ははは(笑)
松重 そういう、なんだろ、人生ダメ出しが
木野 人生ダメ出ししてたと思う
松重 してたと思うってか、もうそれに尽きましたよ、稽古場っていうのが
木野 やめて!ちゃんと芝居の演出してたじゃん
松重 いや、芝居の稽古は
木野 いや、これはね、いまだにそういうとこあるんですよ。やめようと思っているの、時間がもったいないから。人ってさぁ
松重 うん
木野 変わらないじゃない、結局
松重 変わらない
木野 変えたくないものと変わったほうがいいものとあると思わない?
松重 はいはいはい
木野 で、そこは、本当は自分で気が付いて自分で変えるしかないのよね
松重 うんうんうん
木野 であたしは何故演劇をやったかっていうと、教師が務まんなかったの
松重 うん、それは何でですか?
木野 その…。学校全体がひとつの会社のようにみえたのよ
松重 あー。
木野 校長は社長で、教頭はなんか部長みたいな感じの?
松重 組織の中で
木野 そういう組織の中で社会性がない自分を痛感したわけ
松重 ええ
木野 なんかいろんなことができないわけですよ。それまで美術やってたし
松重 美術なんてそれはアーティストの仕事ですから、アーティストがやる…
木野 うん、なんだか、縛りのない世界で羽伸ばして大学時代なんかやってたわけじゃない?
松重 うん
木野 で、突然、先生っていうしっかりもんな役割をさ、こう、ね、期待されちゃうわけじゃないの。まったくできないことがわかったの。お茶ひとつちゃんと汲めないのよ
松重 お茶は別に(笑)あ、学校の中でね
木野 いや(笑)あのね、お茶はねぇ、馬鹿にしてるけどね、一人ひとりの先生の茶碗を覚えなきゃいけないんだよ
松重 あーーそれはやっぱり
木野 これはどの先生って覚えるところから始まり
松重 美術教師としての仕事以外のことだよね
木野 だって新人、新任だから、いろいろやらなくちゃいけなくて、それで頭いっぱいになっていると先輩の女の先生から、お茶碗がポンと目の前にコトって置かれるわけですよ。
松重 ええ
木野 あ、また、先を越されたと思って、それが何回か続くともうなんだかノイローゼのようになって
松重 うん
木野 「今日は休み時間、お茶お茶お茶!」っと思って必死でお茶ですよ。で、お茶で終わるわけよ、休み時間がぁ!
松重 ははは
木野 で、だんだんもう、ストレスで病気になるの
松重 授業自体はどうだったんですか?
木野 授業はだって美術だから。遊んでるようなもんじゃない?
松重 遊んでるんだ(笑)
木野 まぁ(笑)遊んでるわけよ子供といっしょに
松重 うんうん
木野 お天気いいから、あたし、昔からお天気いいと外出ちゃうのね
松重 ははは
木野 で、外で写生とかやって、なんか楽しくやってるんだけど、職員室が辛くて
松重 あー
木野 それで、病気になってストレスで神経性胃炎だっていわれたの。どうしたらいいのって聞いたら、環境変えるのが一番だけど無理でしょとか言われたんだけど、ピンと来たの
松重 うん、ピンと来たっていうのは?
木野 これ、本当に教師やめなきゃ胃癌になるなと思ったの
松重 あーうん
木野 それで、もうスタコラさっさで
松重 それで青森から東京に出て、なんで、その、演劇のスイッチってどこで入るんですか?
木野 だから、あのね
松重 うん
木野 思いっきり一回羽根を伸ばし、そして、なおかつ自分のこのわがままな怠けた根性をたたきのめされるような、打ちのめされて、もう一回帰って、心あらためて、まっとうな職業に就こうぐらいな
松重 あ、ってことは
木野 人生設計図あったわけよ
松重 リハビリっていうか
木野 そう、リハビリなの完全に。それで3年か5年で帰るって、出てきたわけ。で、見たら、アングラで全盛で、ここがすごく怖そうだと思って
松重 アングラは、その時、青森で見ることはできたんですか?
木野 「美術手帖」を取ってって、情報だけは入るわけよ
松重 寺山さんとか
木野 寺山さんとか唐十郎さんとかが対談してて、なんかスゴイこと語ってるわけさ
松重 はいはいはい
木野 あ、なんか木っ端みじんにされそうだって感じがするわけ
松重 ええ
木野 それで、まぁとりあえず東京なんだろうなと、都会で、何者でもない自分を実感して帰ってこようとか思って。いろいろイメージはあったのね
松重 ふーむ。いや木野さんの話はね、まだまだねいろいろ聞きたいことがある、まだまだ青森から出てきたばっかりの話で、もうね、曲に行くということですけどね
木野 あ、そうですか
松重 深夜の音楽食堂ここで一曲行きたいと思います。木野花さんに選曲していただきました、何を?
木野 ビートルズ「フール・オン・ザ・ヒル」
松重 へえー、これは何でですか?
木野 これさぁ(嬉)ガリレオの話だって知ってた?
松重 ガリレオ?
木野 うん、ガリレオ・ガリレイ
松重 ガリレオ・ガリレイ
木野 あのね、丘の上に一人の馬鹿がいて、立ってて、いつも沈む夕日を眺めているっていうね
松重 えぇ
木野 みんなあいつを馬鹿だっていうけど、彼は大きく開いた心の目で、動く地球を眺めているって詩なのよぉ!
松重 おぉ~~素晴らしい
木野 素敵じゃない?
松重 えぇ
木野 それ、最近知ったの。で、あらためてそう思って聴くと、またいい歌なのよね
松重 じゃ、行ってみましょう
木野 はい
松重 ザ・ビートルズで「ザ・フール・オン・ザ・ヒル」
~曲~
 
 
松重 お送りしたのは木野花さんからのリクエスト、ザ・ビートルズで「ザ・フール・オン・ザ・ヒル」でした
木野 はい
松重 じゃ、中学・高校からビートルズを聴いて
木野 うん
松重 青森って言ったら(当時)そんな生で音楽聴く機会ってそんなになかった…
木野 ないない全然ない
松重 ないですよねー
木野 うん
松重 で、東京出てきて「(劇団)青い鳥」を結成するのは
木野 すぐね、養成所で出会ってね
松重 東京演劇アンサンブルで出会った5人で
木野 どっかの劇団に入ろうと思ってたんだけど、なんか、ピンとこないわけよね、それで
松重 数あるアングラ劇団もあったわけですから
木野 アングラの唐十郎さんに一番影響を受けているんだけど、ここに入ったらつぶされるなっては思ったわけ
松重 あー
木野 絶対役も貰えないだろうなって感じがして、だからそこはそこで見て、盗もうみたいな感じで
松重 うんうんうん
木野 とりあえず出発しちゃえって感じでやってて、でもあたし、結局演劇がどうこうじゃなくて、自分変えたくて来てるもんだから
松重 うんうんうん
木野 ま、いろんな勉強して、私の心に留まったのは「開放と集中」って言葉が
松重 はい、出てきました「開放と集中」
木野 演劇のテキストにはよく出てくるでしょ
松重 はいはいもうフラワーズカンパニーでもね、よく僕鍛われましたよ「開放と集中」、はい…
木野 開放、で、集中、するというこの二つさえ、ま、すごく大雑把にどうにかすれば
松重 なんとかコントロールできるようになればってことですよね
木野 そうなの、開いていくって、で、この開いていくところにあたしを変える鍵があるだろうと
松重 あーー
木野 こう社会性のない自分を、だめだだめだ苦手だ、苦手がいっぱいなのよね、あたし、だからそのわがままなあれを、いろんなものに対してもっと開いていくっていうことをしなきゃだめだと思って、演劇っていうのを基にして、ま、やってったもんだから。ようやく本題に近づいたよ(笑)
松重 はいはい
木野 だから稽古とか演出とかしてると、そこが気になるわけよ
松重 あのー木野さんね、ようするにそのー青い鳥で役者で自分の中でその開放と集中ってことで自分をなんとなくこう見極めて、で、そうするとじゃ、これでもうあのもう一回田舎に帰って教師やろうとかじゃなくて、
木野 そうそうそう
松重 逆にじゃあこれを人に伝えてこうっていうふうに思ったの
木野 そんなことも何も、そんな感心した話じゃなくて、10年ぐらい気がついたら浦島太郎みたい、10年経っちゃった感じなの。続いちゃったなってことなんですよ
松重 芝居がね
木野 うん。じゃなんでかっていったら、楽しかったんですよ
松重 うん。開放と集中っていうその武器を手に入れると
木野 で、開放していくと楽しいのよねぇ!(笑)
松重 ふふふふふふふ(笑)
木野 なんだろうなー、なーに気にしてたのみたいなことでもあるわけ
松重 はい
木野 つまり、閉じてたわけじゃないの自分を
松重 あの、これほんとにねぇ僕らもホントに若い俳優部さんとかっていうのでよく思うんですけど、僕らもほんと開放と集中っていうその開放の部分、集中はねある程度コントロールできると思うんですけども、要するに自分の自意識とかそういう、いや、簡単にいうと殻みたいなものを、こういうもんだろうと閉じ込めているもの、枠の中にいるとやっぱり表現としては成立しないんですよね。見てても恥ずかしくなるし、それが「開放」っていうその武器を手に入れると、何でもオッケーになる感じで
木野 ラクよね
松重 「開放」している奴をみると単純に笑えちゃうんですよね
木野 そう!
松重 だから、そいつの芝居見て、なんか笑えないなあと思ったら、だいたいそいつはね
木野 隠してんの
松重 自意識の中で芝居をやっちゃってるんですよ
木野 うん
松重 それが、やっぱり20代・30代はそこを突破出来るかどうかってことがやっぱり非常に大命題だと思う
木野 その頃会ったのよ、松重に!
松重 そうです、そうです。だから僕は蜷川さんとかそういうことを教える人じゃなくて、やっぱり芝居のそのなんだろう、イメージとかそういうことの、もっと開放するってよりもその「集中」して行く作業を、研ぎすませて行くっていうことのほうが強い演出家だったんで、逆にその「開けよ」って言われることの怖さと面白さってのは、木野さんから教わったんですよ
木野 うん
松重 で、10年続けてみて女優から演出にシフトするってのはどういう気持ちの流れの…
木野 さて、こっからですよ、ね(笑)
松重 こっからですね、はい
木野 あたしね、ほんとに無目的だったんですよ、ほんとうに。無理だろうと、はなから思ってたの。アルバイトでやれるとこまでやって行こうぐらいしか考えてない訳ですよ。それで、だからとにかくまだまだどこまで変わるか、演劇を通して自分を変えて行こうってことだけが目標なわけ、いつまでも。でも、なんかいつのまにか書いたり、演出したり、あ、あれ?私なんかいろんなことやっちゃってるよな?ってことなのね。10年こう、経ってみたら。それで、今度声がかかってくるじゃない
松重 はいはいはい
木野 客演してみませんかとか、コマーシャル出てみませんかとか、全部、こんにちのあたしを作ったのは(外部からの)声なの
松重 あー
木野 外からかかってきたことに、あ、やってみようかなって行って、怖いんだけど、でもほら、そこは開放とか思いながら、怖いこと体験しながら、経験経験って思ってやるわけじゃない、全部それで、こんにちがあるんだよ
松重 あー
木野 面白いでしょ
松重 面白いっていうか
木野 ヘン?(笑)
松重 で、その中でもやっぱり僕らのイメージで行くと、演出家・木野さんっていうね、そこにぼくらほんとに若い、いや、若いっていうかあの頃若かったんだけども(今は)50代くらいのホントにそうそうたるメンバーがね、木野さんの演出でしごかれましたからね、そういう話しをまだまだ続いていきますけれども、深夜の音楽食堂このへんでまた曲にまいりましょう、えー今度は私の選んだ曲でございます。えー「クラウド・ナイン」という、そういうユニットなのかな、そういうのが日本にもありましてね、そこでね「ウィンターメモリーズ」という曲をひとつどうぞ
~曲~
 
 
松重 松重豊がお送りしている深夜の音楽食堂、今夜は女優で演出家の木野花さんをお迎えしております。さて「クラウドナイン」
木野 と言えば(笑)
松重 クラウドナインというのは、えーどういう意味でしたっけ、もともとは
木野 あのね、真夏の真っ青な空に積乱雲がこう浮いてて、爽快!って感じ?
松重 なんかハイな気分
木野 ハイな気分
松重 っていう題のお芝居なんですけれども、イギリスの劇作家キャリル・チャーチルの作品で、書かれたのはもうかれこれ3・40年前で、79年(ロンドンで)初演ですからね
木野 そうですね、40年位経ってる?あ、経ってないか
松重 それを木野さんは3回目の演出ってことですよね
木野 そうですね
松重 初演が?もう
木野 1988年?
松重 はい
木野 86年か?
松重 86年?じゃもう31年前だ
木野 うん、30年以上前に初演があって。で、やってみないかっていう。あの、女性なんですよ、キャリル・チャーチルは
松重 はいはい
木野 それで、ま、女性の演出家でやってみたらどうかっていう提案があって
松重 向うから提案があったの?
木野 はい。声がかかったときに、尻込みしたのちょっと
松重 うーん
木野 それまで「(劇団)青い鳥」しかやってなくて、翻訳劇で、プロデュース公演でって、もう全部が初めてづくしだったんですよ。演出ってのもひとり単独でやるってのも初めてだったんですよ
松重 あー
木野 で、初めてのもので「クラウドナイン」は難しすぎるだろうっていう。(戯曲を)読んでみて、これ料理出来ないなって感じがして断ったんだけど、わりとしつこく言われてもう一回読み直して、(依頼が)来たんだからやれってことかなぁと思いつつ、怖かったけど引き受けたの
松重 実はね、1995年に、別の、僕はイギリスのマシュー・ロイドの演出でですね
木野
松重 わたくしも「クラウド9」っていう芝居に出演して、えーあの、ほんと思い出は深いんですけど、ざっくりいうとどんなストーリーになりますかね
木野 1880年代ビクトリア時代、イギリスの、その植民地・アフリカでのまずお話が
松重 一幕がね
木野 一幕は。で、ひとつの家族のお話なんです。そこで、そこを統治してたそのお父さん…そこを統治している人で、その家族と、召使いだったり、家庭教師なんかが絡んで、言ってみれば、ま、恋愛ドタバタ劇を演じている感じなんですよ、一家が。で、ま、遠く離れてみるともう、青春を生きてるなっていうアフリカの大地でね。恋愛沙汰で、ああでもないこうでもないって騒いでいる感じが一幕にあって。それで25年後、その家族がロンドンに戻って、25歳後の今度は、ロンドンでの生活が語られるワケよ
松重 時間軸で行くと100年以上経ってる…
木野 だけども時代は100年経ってるという設定になっているところが、ミソなんですけども
松重 それでいて、なおかつ演じる役もかわっちゃう
木野 完全にかわるんです
松重 男が女になったり、黒人が白人になったり
木野 そう、大人が子ども役やったりとか、もうごちゃまぜ。性がごちゃまぜになってるってのも、これも作家の狙いでもあるのよね。だから、性っていうものをひとつテーマにして「人間」を掘り下げて行ってるんだなって感じはわかったわけですよ。100年前のアフリカで、人種差別から性差別からってのもあって、で、さて現代はどうなんだろうってなった時に、100年も経ったんだから少し人間は成長してるかと思えば、たいして成長していない、ある意味時代が年をとってて、疲弊してるっていうか、そういう中で、やっぱり人間がどう生きたらいいのかなって、右往左往してるという話しであるのよね
松重 性に関する話しがもうこれでもかってぐらい出て来て
木野 そうですね
松重 30年近く前にやったころっていうのは、LGBTだとかそういうなんかこう性に関しての言葉もそんなに日本で開放されてるわけではなかったし、あらためて読み返してみると、あー、これは今やっと日本もそういう
木野 ようやく日本もね
松重 ようやく日本も追いついてきたかなって、こういうものをちゃんと提示して行かないと、やっぱり次の性に対して語ることができないような気がしてて、なんかいろんな問題も起きてるわけですけども、そういうことをこう芝居でこうやって、なおかつ役者は違う性を演じたり違う年代を演じたりする中で、正直僕やった中ではその、一幕と二幕の役で、一幕の役はなんとかスッと入れたんですけど、二幕になかなか入れない役があったとかっていうのがあって、得意不得意があるんで、そこはまたね、あのー、面白さですよね
木野 あのね、この仕掛けはね、やっぱ作家の狙いでもあると思うんだけど、やりづらさと生きづらさみたいなのを、役者が抱えて舞台にのるっていうのがミソなんですよ
松重 はーーーー
木野 だから上手く演じられちゃうと、逆につまんないんだろうなと思うわけよ、だから、絶対ひとつは得意な役をキャスティングするけど、もうひとつは絶対苦手だろうってのをキャスティングした方が面白いんですよ。そこで悩んでるから
松重 で、今回のメンツが高嶋政宏さん、伊勢志摩さん、三浦貴大くん、正名僕蔵くん、平岩紙ちゃん、宍戸美和公さん、石橋けいさん、入江雅人さんという
木野 これ、嫌ってほど個性的でしょ(笑)
松重 キツいですねー、このメンバー(笑)
木野 キツいっていうか(笑)いや、よく集まったなって言う感じ
松重 濃いですねーー
木野 濃いでしょ
松重 だから、濃いメンバーがこれだけの濃い、この性にまつわる、こういろんなエピソードを…
木野 思いっきりやってもらおうと思ってる
松重 思いっきり開放してやってもらいたいですねぇ
木野 はい(笑)
松重 えー、深夜の音楽食堂、まだまだ木野花さんのお話聞きたいところなのですが、すいません、今週はそろそろお別れの時間にということでですね、このクラウドナインのお話、また来週もうちょっと聞きたいと思いますんで、お別れの前に公演の情報をお伝えしておきます。
モチロンプロデュース「クラウドナイン」東京公演は12月1日~12月17日まで、東京芸術劇場シアターイーストにて。大阪公演もあります。12月22日から24日まで、OBP円形ホール、詳しいことは大人計画ホームページ内「クラウドナイン」のページをチェックしてください。えー、木野さん来週もおつきあいしていただけますかね?
木野 はい
松重 よろしくお願いします
木野 よろしくお願いします
松重 では深夜の音楽食堂、最後に木野花さんからのリクエスト宇多田ヒカルさんの「人魚」を聴きながらお別れです。木野さん、どうしてこの曲を?
木野 宇多田ヒカルだってわからずに聴いて誰だ?って思ってコレは?と思ったら、宇多田ヒカルだったんです。私この歌本当に好き。今年ずっと聴いてる
松重 ごく最近の曲ですよね
木野 最近です、「Fantôm」っていうアルバムに載ってて
松重 は、お届けしましょう宇多田ヒカルで「人魚」
FMヨコハマ『深夜の音楽食堂』ここまでのお相手は松重豊と
木野 木野花でした
松重・木野 おやすみなさーい
~曲~
〈転載不可〉
 
FMヨコハマ『深夜の音楽食堂』
DJ:松重 豊 ゲスト:木野 花
【オンエア DATA】
1週目:2017年11月28日(火)24:30~25:00
2週目:2017年12月5日(火)24:30~25:00
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